神殺しのクロノスタシス6
…再び、目を開いた時。
俺は、固い地面の上に仰向けに転がっていた。
どうやら地面に叩きつけられたらしく、背中がじんじんと痛くて、すぐに起き上がれなかった。
「…」
背中の痛みに顔をしかめながら、俺はそのまま、ぼんやりと空を見上げていた。
奇妙な空だった。
空は墨を溶かしたように真っ黒なのに、空には大きな太陽が…黒い太陽が燦々と輝いていた。
その黒い空には、いくつもの傷跡のような亀裂が入り、赤黒い裂け目が無数に出来ていた。
恐ろしいなんてもんじゃない。ただ不気味である。
…ホラーファンタジーの世界に迷い込んだみたいだ。
ぼんやりと、そのまま不気味な空を見上げていたが。
「…っ!」
唐突に、そんなことをしている場合じゃないと思い出した。
俺は上体を起こして飛び起きた。
が、それが悪かったらしく。
「っ、いってぇ…」
叩きつけられた背中が、じんじんと痛かった。
しかし、それがどうしたと言うのだ。
ここは冥界。魔物の住む世界。
人間は、決して足を踏み入れはいけない世界なのだ。
そんな世界に、お邪魔しますとばかりに飛び込んできて。
背中をぶつけたくらいで済んでるのだから、可愛いもんだろう。
背中の痛みに耐えながら、その場に立ち上がった。
…改めて見渡してみると、冥界という場所は、本当に不気味だった。
夢の中にいるように、足元が覚束ない。
深夜の神社に、無断で忍び込んでいるような気分だ。
「ここに居てはいけない」と、本能が訴えかけているような…。
全身がチリチリとむず痒く、焦燥と恐怖心をミックスした緊張感に包まれていた。
気持ち悪い…。…物凄く。
辿り着いたそこは、まるで古い遺跡のような場所だった。
朽ち果てたレンガや、大きな石がいくつも転がっている。
何かの建築物の跡地なんだろうか?何もかもひび割れて、壊れて…瓦礫が山積みになっている。
随分長らく放置されているのか、割れた瓦礫の隙間から、枯れた雑草が伸びていた。
…さながら廃墟のようだな…。
不気味この上ない景色だが…。…これでも、まだマシなのかもしれない。
冥界に飛び込んだ瞬間、正体不明の魔物に襲われる…なんて恐ろしい事態は避けられたのだから。
見たところ、周囲に魔物の気配はなかった。
とはいえ、油断は出来ない。
そもそも人間は、魔物の気配を察知することは出来ないのだから。
いつ、見えない場所から不意打ちで攻撃されるか…。
だが、俺にとってそんなことはどうでも良かった。
ここが何処だろうが、魔物に襲われようがどうでも良い。
それよりも…。
「…シルナ…。シルナ、何処だ!?」
魔物に見つかる危険を犯してでも、俺は大声をあげてシルナを呼んだ。
俺の隣に、俺の傍らに、シルナがいないこと。
これ以上に恐ろしいことなど、俺にはなかった。
きっと、シルナにとってもそうだろう。
俺は、固い地面の上に仰向けに転がっていた。
どうやら地面に叩きつけられたらしく、背中がじんじんと痛くて、すぐに起き上がれなかった。
「…」
背中の痛みに顔をしかめながら、俺はそのまま、ぼんやりと空を見上げていた。
奇妙な空だった。
空は墨を溶かしたように真っ黒なのに、空には大きな太陽が…黒い太陽が燦々と輝いていた。
その黒い空には、いくつもの傷跡のような亀裂が入り、赤黒い裂け目が無数に出来ていた。
恐ろしいなんてもんじゃない。ただ不気味である。
…ホラーファンタジーの世界に迷い込んだみたいだ。
ぼんやりと、そのまま不気味な空を見上げていたが。
「…っ!」
唐突に、そんなことをしている場合じゃないと思い出した。
俺は上体を起こして飛び起きた。
が、それが悪かったらしく。
「っ、いってぇ…」
叩きつけられた背中が、じんじんと痛かった。
しかし、それがどうしたと言うのだ。
ここは冥界。魔物の住む世界。
人間は、決して足を踏み入れはいけない世界なのだ。
そんな世界に、お邪魔しますとばかりに飛び込んできて。
背中をぶつけたくらいで済んでるのだから、可愛いもんだろう。
背中の痛みに耐えながら、その場に立ち上がった。
…改めて見渡してみると、冥界という場所は、本当に不気味だった。
夢の中にいるように、足元が覚束ない。
深夜の神社に、無断で忍び込んでいるような気分だ。
「ここに居てはいけない」と、本能が訴えかけているような…。
全身がチリチリとむず痒く、焦燥と恐怖心をミックスした緊張感に包まれていた。
気持ち悪い…。…物凄く。
辿り着いたそこは、まるで古い遺跡のような場所だった。
朽ち果てたレンガや、大きな石がいくつも転がっている。
何かの建築物の跡地なんだろうか?何もかもひび割れて、壊れて…瓦礫が山積みになっている。
随分長らく放置されているのか、割れた瓦礫の隙間から、枯れた雑草が伸びていた。
…さながら廃墟のようだな…。
不気味この上ない景色だが…。…これでも、まだマシなのかもしれない。
冥界に飛び込んだ瞬間、正体不明の魔物に襲われる…なんて恐ろしい事態は避けられたのだから。
見たところ、周囲に魔物の気配はなかった。
とはいえ、油断は出来ない。
そもそも人間は、魔物の気配を察知することは出来ないのだから。
いつ、見えない場所から不意打ちで攻撃されるか…。
だが、俺にとってそんなことはどうでも良かった。
ここが何処だろうが、魔物に襲われようがどうでも良い。
それよりも…。
「…シルナ…。シルナ、何処だ!?」
魔物に見つかる危険を犯してでも、俺は大声をあげてシルナを呼んだ。
俺の隣に、俺の傍らに、シルナがいないこと。
これ以上に恐ろしいことなど、俺にはなかった。
きっと、シルナにとってもそうだろう。