神殺しのクロノスタシス6
とにもかくにも、周囲の状況を確認しなくては。

俺はベリクリーデと共に、恐る恐る遺跡(?)跡地を歩き始めた。

人っ子一人…ならぬ。

魔物っ子一人いないな。

まぁ、魔物に出てこられたら困るから、むしろ助かっているのだが…。

それにしたって、虫一匹見つからないのは、逆に不気味…。

冥界特有の異様な雰囲気と相まって、余計に気味が悪い。

虫の声、風の音一つ聞こえない。

一人だったら、あまりの恐ろしさに気後れしてしまいそうなところだったが…。

「見て見て。キノコ生えてる」

ベリクリーデは無邪気にしゃがみ込んで、瓦礫の隙間から覗いた、紫色のキノコを指差した。

…なんか、状況が状況なだけに、むしろ癒やされるな。

「摘んで帰ろーっと」

あろうことか、冥界土産とばかりに、せっせとキノコを収穫していた。

おい、やめとけって。毒キノコだったらどうするんだ。

「あのな、ベリクリーデ。キノコも良いけど、竜の祠を先に…」

「あ。あっちにも生えてる」

全然話、聞いてくれない。

あっちにふらふら、こっちにふらふら。まるで小さな子供のようだ。

ジュリスがよく、ベリクリーデに迷子防止用ハーネスをつけたいと言ってるが。

その気持ちがよく分かった。

「キノコ、いっぱい取れた」

「そうか…。良かったな…」

「食べる?」

「それは遠慮しとく…」

そのキノコは、紫色のカサに、赤黒い斑点がびっしりと浮いた、見るからに毒々しい色をしていた。

絶対毒キノコだって。猛毒だよきっと。

「じゃあ、うんまい棒あげるね。はい」

ベリクリーデは、俺の手にうんまい棒(サルミアッキ味)を握らせてきた。

…こっちも要らねぇ…。

せめてサルミアッキ味じゃなければ…。普通のサラダ味とかコンポタ味だったら、喜んでもらってたんだが。

しっかし、冥界に来ても相変わらず自由だなぁ、ベリクリーデは…。大物の器だよ…。

…って、俺もベリクリーデと同じ器なんだけどな…。この違いは何なのか。

「天然モノ」の器と、「養殖」の器の違いなのか。

「あ、見てー。あっちにも何か生えてる」

「ちょっ…。ちょっと待ってくれ、ベリクリーデ」

「ほぇ?」

無邪気な顔だなぁ。

「キノコは良いんだけどさ、その前に竜の祠を一緒に探してくれ」

「…ほこら?何処にあるの?」

「…さぁ…」

分からないから探そうとしてるんだよ。今。

キノコより先に、探しものを探してくれ。

「ジュリスとも合流しないといけないだろ?まずは、この遺跡から出よう」

「成程、そっかー。うん、分かった」

よし。

ベリクリーデの了解も得られたから、まずは二人で、この遺跡から脱出しよう。
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