神殺しのクロノスタシス6
…と、思ったのだが。

この謎の遺跡跡地から脱出するのは、予想以上に困難を極めた。

「…うーん。ここも行き止まりだね」

「…あぁ…」

駄目だな。こっちも行き止まり…。

じゃあ次は道を変えて、別のルートで…。

…歩いた、つもりだったのだが。

「ここも行き止まりか…」

「じゃあ、あっちの道を通ってみる?」

「そうだな」

こっちも駄目なら…と、ベリクリーデが指差した道を通って。

しばらく、そのまま歩いてみたが…。

「…ねぇ」

「…何だ?ベリクリーデ」

「…ここ、さっき通らなかった?」

…奇遇だな。

俺も今、同じことを考えていたところだ。

何処もかしこも崩れて、真っ直ぐ進むだけでも足を取られるのに。

何の目印もなく、あてもなくぐるぐると同じ場所を歩き回っていた。

似たような景色がずっと続いているせいで、景色に新鮮味が全然ない。

「迷子だね」

「…迷子だな…」

紛うことなく、迷子だ。

嘘だろ…?冥界を彷徨う覚悟はしてたけど、まさか最初に辿り着いた遺跡から出ることさえ叶わないなんて…。

方向音痴にも程がある。

「どうする?何か、目印になるものでも…」

ベタだけど、壁に傷でもつけるか。

すると、ベリクリーデが。

「それなら、さっき拾ったキノコを目印に落としておこう」

ヘンゼルとグレーテルみたいな発想だな。

あれは小石であって、キノコじゃないけど…。

目印代わりになるなら、石でもパン屑でもキノコでも、何でも良いよ。

「…それにしても…」

俺は、半分崩れかかった壁に、そっと手を触れた。

「どうしたの?」

「いや…。これ、何か彫ってあるように見えたから…」

手のひらで、壁のススを払うと。

その下から、崩れかかった石板みたいな…不思議な模様が彫ってあるのが分かった。

やっぱり。

「ピラミッドみたいだな…」

「何?ぴらみっとって」

「何って言われても…。昔の人が残した遺跡みたいな…」

ピラミッドかどうかは分からないよ?冥界にピラミッドがあるなんて、聞いたことないし。

でも、似たような何かなんじゃないだろうか。

ピラミッドっていうのは、昔の人のお墓なんだろう?

ってことは、ここは誰かの墓なのか?

この壁に彫ってある模様は?絵なのか、それとも文字なのか…。

「これ、なんて書いてあるんだろうな…?」

「うーん…。昔の人の言葉かな?分かんないね。ジュリスだったら分かったかなぁ」

「そうだな…。シルナとかだったら、無駄に物知りだから、分かったかも…」

もしかしてここに、物凄く重要な情報が彫ってあったりしない?

だとしたら、俺達、相当勿体ないことしてるよな…。

でも、読めないものは仕方ない。

「とにかく、まずはここを出て…。シルナやジュリスを見つけたら、ここに連れてきて見てもらおうか…」

解読してくれたら良いんだけど…。って言うか、まずは合流出来たら良いんだけど。

もしかして、このままこのピラミッド(?)から、一生出られなかったりして…。

…あぁ、駄目だ。やめとこう。そういうことを考えるものじゃない。

それなのに、そんな俺の心配をよそに。

「あ、見て。この先は、まだ行ったことないよ」

「あ、ちょっ…待てって」

ベリクリーデは好奇心の赴くまま、瓦礫を掻き分けてどんどん進んでいった。

仕方なく、俺はそんなベリクリーデの後ろを追いかけた。
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