骨の髄まで

駐車場に置かれた社用車の助手席に乗り込む。

「あ、私が運転しますか?」

流れで入ってしまったけれど、シートベルトを締める前に気付く。反対に月野さんは運転席でシートベルトを締めていた。

「初めての場所なので大丈夫です。道を覚えてください」
「お蕎麦屋さんの……?」
「営業先も」

営業先はついで、らしい。

運転をする月野さんの整った横顔を見る。

不思議だ。
あの頃は憎んですらいた人と一緒に仕事をするなんて。

「人事では、どの課に居たんですか」

見ていたのがばれたのか、話しかけられた。

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