骨の髄まで
酒で思考が鈍りすぎていた。
ちゃんと月野さんを見るけれど、やっぱり顔が紅い。
「月野さん、酔ってます……?」
「酔ってません」
「酔っ払いの常套句ですよ、それ」
「酔ってたら、何ですか。日下部さんを攫っても良いんですか」
いや良くはない。良いわけがない。
ただ、私を好きなのは何かの間違いだろうとは推測出来る。
「誰かと間違えてません?」
「誰かって」
「同じ日下部さんとか。同じ倫さんとか?」
「同じ倫さんではありましたね。僕が知ってたのは、陽向倫でしたけど」
その名前が出され、その日々が一瞬にして脳裏に流れた。