骨の髄まで
朝の会話をきっかけに、不思議なことに月野さんとの距離感が最初に戻った。
同行先では一緒に蕎麦を食べている。
「どうしてうちの会社にいるんですか?」
一本だけ吸いたいと言った月野さんを待ちながら、私は自販機で買ってもらった林檎ジュースを手の中で転がしていた。
なんとなく聞いてみたけれど、本当はずっと聞きたかったことだ。
月野本家は医者や国家公務員やらが沢山いる。私の母も私にそうなって欲しかったのだと思う。
月野さんは本家のツテでもコネでも使えば、いや使わなくともその有能さであればもっと良い職に就けただろう。