骨の髄まで
立って紙煙草を吸うその人は、紫煙を吐きながらこちらを見下ろした。
「最初に内定を貰った会社だったからです」
「え、ご両親はそれで納得されました?」
思わず尋ねる。
私の質問に少し哀しそうな諦めたような顔をして、口を開いた。
「父親が外に女を作って、家族は空中分解しました。あれだけ教育熱心だった母親も就職に関して何も言わなかったので、堪えてたんじゃないですかね」
初耳だ。それもそうだろうけど。
他人事のように語る月野さんは、遠くを見ていた。
「今はあまり連絡も取ってないです」
再び煙草を咥える。