骨の髄まで
全部、私が持ってないものを持ってたから。
私が三倍努力しないと持てないものを、最初から備えていたから。
「全部」
月野さんは私の言葉を復唱して、ふっと笑った。
笑うんだ、と自分の失礼を棚に上げて驚く。
「僕は全部、好きですよ」
そして見たことのない柔らかい顔をしてそんなことを言うので、胸の奥をぐっと鷲掴みにされたような気持ちになった。
「休憩終わりです。戻りましょう」
すっと無表情に変わり、月野さんは喫煙所から出ていく。
残された私は一人、顔を覆った。
あつい。