骨の髄まで
振り向いた月野さんが私をじっと見下ろした。
「日下部……」
「はい」
「名字、変わったんですね」
それは質問だったのか、ただの感想だったのか。
受け止める余裕もなかった。
覚えていた、私のこと。
驚きと少しの羞恥と記憶が押し寄せる。
ずっと眠っていたものが、一気に。
「月野です、よろしくお願いします」
半身のまま挨拶して、それから正面を向く。行ってしまう背中を置いていかれないように追った。
「月野くんの下なの? へー、課長も面白いことするなあ」
同じ部署の星土さんがクスクスと上品に笑う。