骨の髄まで
月野さんは変わらず無表情で挨拶をした。
「何か、困ってますか」
差し出されたままの電卓をみる。
ぶわ、と視界が濡れる。
「……困ってます」
「力になりますね」
受け取れないままの電卓は、私の机にもどってきた。
「月野さん、今日お客さんのとこじゃないんですか……」
「担当さんが体調不良で延期になりました。何があったんですか」
「野津リビングさんの締日のこと、すっかり忘れていて」
そう言うと、ああと納得したように月野さんは椅子に座る。
「15時までです」
腕時計を見る。