骨の髄まで

午後、客先から戻ると課長が給湯室でコーヒーを淹れていた。

「お疲れ様です」
「おかえり。飲む?」

持っていたドリップパックを見せられる。美味しいメーカーのものだったので頂くことにした。

「月野くんさ」

横で手を洗っていると、お湯を沸かしてくれている課長が徐に口を開く。

「日下部さんが入ってから随分柔らかくなって良かったよ」
「柔らかい、ですか?」

固いか柔いかでいえば、固いほうだと思う。

「そうそう。4月と違うでしょ?」

私が異動してきた最初の時は暗い人だなという印象だった。

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