骨の髄まで
返答してそのコーヒーを受け取る。
「課長にコーヒーを」
「くれるって言ったから貰ったんです」
「そうですか。トラブルは無かったですか」
隣に並び、月野さんはマグカップを取り出す。
なんとなくその手元を見た。
「無かったです」
「良かったです」
「私、月野さんのこと嫌いでした」
手が止まる。すぐに動き出す。動揺しているのだろうか。
「嫌いで居たかったんです。月野さんと比べられて、劣等感を持つ自分を正当化したくて、月野さんを憎まないと生きていけなかったんです」
手が止まる。
月野さんがこちらを見た。