骨の髄まで

続く言葉が知りたくて、私は待つ。

「もっと早くに話しかけていたら」

もっと早く。
もっと前に。

月野さんから勉強を教わったり、蕎麦を一緒に食べたりしていたら。

私は月野さんを憎まず、月野さんはもっと感情豊かになっていただろうか。

「どうですかね、私は思春期でしたし、母の視線がある手前、きっと今みたいに話すことは無かったと思いますよ」

現実はもっと複雑だ。
そう言うと、月野さんも分かっていたのか力なく肩を竦めた。

「そうですね」

でも、私も同じような想像をしていた。

きっと月野さんは勉強を教えるのも得意だっただろうし。

< 68 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop