骨の髄まで

星土さんの制止によりそれは止まる。急に懐かしくなってしまった。

「場所が遠くて、殆どが小学生くらいだったので疲れたとかもう歩けないって言う中で、この人だけが目をキラキラさせていたんです」

いつも排気ガス塗れの近所に住んでいれば、蛍が見られる機会なんてそう無い。その頃のことをあまり覚えていなくても、それは楽しみだっただろう。

「辛い中でも無邪気に楽しむ様子が、その頃の僕の癒やしだったというか、刺さったというか」

刺さった、らしい。

「その頃と言わず、今もそうなんですけど」

私は箸を動かせないままでいた。

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