骨の髄まで

月野さんからの提案に目を瞬かせる。

「蛍を見ても、きっと思い出せることは少ないと思いますけど……」
「これからの思い出を作りたいなと」
「蛍の?」
「蛍じゃなくても」

そもそもどうして私と蛍を? というところまで戻って、そういえばこの人は私が好きだったのだと思い出す。

「行って来たら? この歳で蛍は見に行かないと見られないでしょ」

星土さんに背中を押される。

それはその通りだ。しかし、月野さんと。
うーん、月野さんと……。

見上げると、穏やかな顔で首を傾げられた。

「良いですよ」

自然とそう答えていた。

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