骨の髄まで
嫌だったらって、何が?
瞳の色を見ていると、伝わったのか月野さんが口を開く。
「蛍を見に行くのも、こうして話すのも」
その言葉に思わず笑ってしまった。
「嫌われることに慣れてるのに、月野さんはちゃんとそういう保険をかけますね」
私の言葉に目を丸くさせ、困ったように笑う。
「君から嫌われるのが本当は怖いからです」
夏の夜の匂いがした。
この前やってきた春がもうどこかへいこうとしている。
私は笑おうとして、言葉にできない感情が溢れて泣いてしまった。
それに対して月野さんがおろおろしながら、ハンカチを差し出してくれる。