骨の髄まで
蛍を見に行ったあの日のことを思い出す。
もう疲れたー、と愚図る子供たちの手を引きながら見た蛍の光。
『つかれたの、わすれちゃうくらいきれいだね』
そう言い放った彼女の言葉に、愚図っていた子供たちは気力を持ち直した。
ね、と微笑んだ彼女の顔が眩しくて。
夜の闇に浮かぶ蛍の光よりずっと、君の笑った顔の方が煌めいていた。
エレベーターが開き、営業のフロアから出てきた倫と視線が合う。
「月野さん、探しに行こうと思ってました」
パッと顔を見上げて、少し笑う。
骨の髄まで愛してる。
骨の髄まで おわり
20240701