失恋したら、別の幸せが待っていました!~憧れの部長と溺愛婚
突然の失恋と部長への想い
 オフィスに響き渡るのはPCに入力している音、クライアントと電話で話す声、そして──

「樋川、計算ミス! ここ、間違えてる!」

 私、樋川美月(ひかわみつき)への叱責。出来上がった見積もり書の確認をしながら、私が担当している営業の社員の三島(みしま)さんが指摘してくる。

 大手広告代理店“MOTOMIYA”に勤めている私は総務部に所属していたが、人手が足りないとのことで営業部に移動になり、営業事務員として働いている。

 お客様を応接室に案内してお茶を出したり、営業に依頼された見積もり書を作り、EXCELで契約数や売上高の記録を入力したりする毎日。叱責され、また間違えたのか……と落ち込み、毎日のように溜め息をつきながら仕事をこなしていた。

「すみません、すぐにやり直しますね」

「……ったく、いい加減にしてくれよ。樋川は他の部署からの移動だって知ってるけど、営業事務だって立派な仕事なんだぞ? 毎回毎回、ミスされても困るんだよな!」

 総務部は営業部よりも急かせか働かなくても良さそうだと思って志望したのだが、入社三年後に営業部に移動になった。

 日本で三本の指に入る大手の広告代理店なので、働けるだけありがたかった。なので部署がどこであろうと文句は言わないが、自分の仕事の出来なさに凹む。営業部には女子でも営業でバリバリ働いている人もいれば、私のように営業補佐の営業事務をしている人もいる。

 総務部で三年、営業部でもうすぐ一年、入社後は計四年になった。後輩社員の先輩にもなるのだが、まだまだ手本にはなれない。
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