失恋したら、別の幸せが待っていました!~憧れの部長と溺愛婚
「仕事どうする? 有給使う?」

「今、何時ですか?」

 柔らかい陽射しが部屋に入ってきているけれど、まだ朝方なのだろうか。

「……十三時四十五分」

「えぇー? 大遅刻じゃないですか! とゆーか、部長はどうして自宅に居るんですか?」

 大失態である。確実に三島さんに怒られる未来でしかない。

「俺? 樋川が心配だから、外回りついでに寄ったんだけど? 自由に行動出来るのは営業の特権だよね」

「そうですか……」

 部長は優しく微笑んでいるが、私は三島さんのことを考えると内心、びくびくとして臆病になっている。もうこれ以上、怒られるのも心身ともに厳しい。

「ちなみに樋川は体調が悪くて来れたら来る、ということにしといたからそのまま有給でも大丈夫」

「……ありがとうございます」

 今から自宅に戻って違う洋服に着替えて支度してから来ても十五時くらいになってしまうだろうから、このまま有給にしてもらったほうが身のためだ。私は部長の好意を素直に受け取ることにする。「樋川、昨日のことだけどさ……」

「はい?」

 何だろう、覚えてない。

「彼氏に振られたって言ってて……」

 そのことか。私は酔っている間に話していたらしい。

「俺と付き合うって言ってたけど、本気にしていいのか?」

「え?」

 どういうこと? 全く記憶にないのだ。

「俺はずっと樋川のことが気になってたよ。それに真剣に交際したいとも思っている。六つも年上は嫌か?」

「も、申しわけないのですが……! 記憶にないんです!」

 記憶を辿ってみるが思い出せない。部長の友達オーナーの店でワインをごちそうになった記憶はあるけれど。

「……そうか。やはり、酔ってて出た一言だったんだな」

「わ、私はなんて?」

 恐る恐る訊ねてみる。怖いけれど真実が知りたい。

「あー、それはね……あんな奴と別れて正解です! 部長とお付き合いしたいです、って……」

 部長はベッドに腰掛けて、私の顔を覗き込む。
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