失恋したら、別の幸せが待っていました!~憧れの部長と溺愛婚
「嘘だった?」

 綺麗な顔立ちの部長に覗き込まれた私の顔は、みるみるうちに赤く染まっていく。

「あ、あの……」

「ん?」

「部長のことは憧れではありますが、れ、恋愛感情じゃないというか、なんと言うか」

 モジモジしながら伝え、更には語尾になるにつれ小さな声になり、部長には意味不明な言葉としか把握されないかもしれないけれど。

「じゃあさ、お互いにフリーだから、お試し期間にしない? 俺は樋川とずっと一緒に居たいけど、無理だったら二週間後にお別れしよう」

「……は、はい」

「決まり、ね」

 部長の口車に上手く乗せられた私は簡単に返事をしてしまったが、それで良かったのだろうか? 私はまだ、幼なじみの翔に失恋したばかりだというのに。それに部長は次期社長候補で、私なんかよりもお似合いの女性はたくさんいるはずだ。

 部長は外回りに戻らなくてはならないとのことで、私も一緒に外に出た。社外で部長と肩を並べて歩くなんて不思議なことで、緊張して身体が固まりつつある。意識したくないのに変に意識してしまい、脳内が部長に支配されていく。
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