失恋したら、別の幸せが待っていました!~憧れの部長と溺愛婚
「樋川……! 大丈夫か?」

 私は泣きじゃくったまま、空いていた会議室へと駆け込んだ。

「……はい、ごめん、なさい」

 部長はゆっくりと私の頭を撫でる。不思議と嫌ではなくて、優しい部長の手に撫でられて心の落ち着きを取り戻していく。

「無理するなって言っただろ? とにかく、もっと俺を頼れ。三島に出すのが遅いと言われても関係なしに書類を持ってこい。三島は俺が黙らせるから」

 仕事中の一人称は“私”なのに、今の部長は“俺”と言っていてドキッとする。お試しで付き合う宣言をされたばかりなのに、私は部長が彼氏ならば本当に素敵だろうなと思い始めてしまう。仕事上かもしれないけれど、私の心配をこんなにもしてくれているから。部長の甘いマスクに騙されているのかもしれない、でも、私は……それでも良いと思った。

「私、部長と……お付き合いしたら幸せになれるだろうな」

「え? 今、その話題?」

 部長が驚いた顔をするのも当然だ。そのくらい突拍子もなく胸の内を吐き出したのだから。

「……はい。部長のことをもっとたくさん知りたくなりました」

「樋川……!」

 この場所が社内の会議室だということも忘れて、ぎゅうっと部長は私を抱きしめてくる。私も背中に手を回して抱きしめ返した。部長のふんわりと香るフレグランスと温もりがとても好き。
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