失恋したら、別の幸せが待っていました!~憧れの部長と溺愛婚
 帰って来るなり資料を確認したいと言い、私の元へとやって来た。部長の大和さんも電話中で確認してもらえないし、直接渡すしかない。

 しかし、三島さんは何だかヤケにイライラ気味というか、身体にまとっている煙草の残り香も強かった。

「三島さん、お待たせしました」

 印刷してページ通りに並べた資料のまとめを恐る恐る三島さんに手渡す。彼は、お礼も言わずに私の手から奪い取る様に勢い良く取った。パラパラと資料をめくり、しかめっ面をした。

「おい、樋川」

「何でしょうか?」

 続きの作業に取り掛かろうとした時、とてつもなく低い声を出した三島さんに呼ばれた。

「あのさ、このまとめ方が気に入らない! やり直して!」

 バサッ。

 資料が宙に舞い、床にばらまかれた。営業部の一同、唖然として作業している手が止まる。

 まとめた資料を一枚一枚拾い始めると、背中に部署の皆の視線が突き刺さる。大丈夫、まだやれる、続けなきゃ! そう思いつつも、涙が溢れ出すのを我慢する。

「おい、三島!」

 電話を終えた大和さんが勢い良く、向かって来る。

「今の態度は目に余るものがある!」

 そう言いながら、三島さんの胸ぐらを大和さんが掴みそうになった時、「三島、文句があるなら自分でやりなよ。何でもかんでも樋川ちゃんに押し付けて恥ずかしいと思わないの? 三島にはプライドってもんがないの? トラブルがあったからって、樋川ちゃんにあたるのはお門違いよ!」と言って、営業部の唯一の女性営業さんの梅田(うめだ)さんが私の右手を引いて立たせてくれた。
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