失恋したら、別の幸せが待っていました!~憧れの部長と溺愛婚
「俺、今から取引先に部長と行くことになったから後は宜しくな。ちなみに俺はそのまま帰るから、遅くなりそうだったら部長にはお迎え来てもらえば?」

 三島さんが気を効かせてくれて、後半の言葉は小声だった。いつも説教ばかりだったけれど、案外、良い人なのかもしれない。

 私が仕事ができないせいで、本来のその人の性質を見過ごしていたんだなと感じた。

 定時から二時間経過した午後八時。部署内は誰も居なくなったが、私は珍しく残業中。資料のまとめを印刷して、PC閉じたらお仕事終了だ。

 誰も居ない部署内で、ふぅっと一息をついて背伸びをした。凝り固まった肩が楽になり、リラックスできた気分になる。

「お疲れ様、美月」

「お疲れ様です」

 背後から聞き慣れた声が聞こえて、振り向くと大和さんが外回りから帰って来た。

「もーぅ、定時過ぎて皆が帰る間際になったら、色々聞かれて大変だったんですよ!」

「それは大変でしたねー、樋川美月さん。はい、これ飲んだら帰ろう」

「あったかい」

 大和さんは会社に戻る前に、私の大好きなお店でホットのロイヤルミルクティーをテイクアウトしてきてくれた。

「美味しっ」

「それは良かった」

 私達の他には誰も居ない静かな職場。大和さんは私の隣に座り、ホットコーヒーを飲んでいる。

「震えてる美月を見てたら、いてもたってもいられなくて。部署異動させてあげるための最善策がプロポーズですみません」

「大丈夫ですけど、非常に恥ずかしかったのとビックリしたのと今だに頭の中が混乱してます。一年もお付き合いしてないですし、私なんかが大和さんのお嫁さんの役目を果たせるのかな? って思ったら……」

 私は大和さんの目を見ながら話す。
< 25 / 50 >

この作品をシェア

pagetop