失恋したら、別の幸せが待っていました!~憧れの部長と溺愛婚
「三島、そう言わずに面倒見てやってくれ」

 部長は三島さんの側まで寄り、ポンポンと軽く肩を叩く。

「はぁ~、絶対に今回だけですよ? 次、ミスしたら違う事務の子にしてもらいますからね!」

「分かったよ。樋川も自分で確認しても間違えに気付かないなら、私が確認するから終わり次第、言いなさい」

 部長はイライラ気味な三島さんを宥めてから、私への配慮も怠らない。私は人として部長を尊敬していた。

 営業の社員達は営業成績が基本給アップやボーナスの査定に響くので、毎日のようにピリピリと張り詰めているムードで仕事をしている。営業部内では一見、皆が仲良さそうに見えても全員がライバルなのだ。

 契約数が伸び悩んだり、大口の契約が取れないとなると本人達はナーバスになり、他人にも厳しくなる。部長は社員達をまとめる立場であり、皆に気配りをしていた。

 見積もり書のやり直しを命じられPCにかじりつくように修正をしていた時、デスク横に置いているサイレント設定のスマホに明かりが灯る。

 作業を止めて確認するとメッセージアプリに届いていたのは彼氏からのメッセージだった。

『今日は定時で上がれそうだから飯食べに行こう』

 メッセージを見た瞬間に"珍しく定時で上がれそうなんだ!"とテンションが上がり、集中力がアップする。彼氏は忙しい人なので、会うのも仕事帰りの外食も久しぶり。

 定時まであと二時間ある。私は注意を受けたことなどどこ吹く風のように忘れ去り、仕事に集中し始めた。二時間後の自分を想像しながら頑張る。

 事務員は余程忙しくない限りは当企業は残業は推奨していないので、自分は常に定時で仕事をあがっている。指摘のあった見積書の修正をして、部長に確認してもらい、今日も定時であがった。
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