失恋したら、別の幸せが待っていました!~憧れの部長と溺愛婚
「美月、忘れ物ないようにね!」

「はい、気をつけます」

 会社に到着し、社内の地下駐車場に車を停めてエレベーターへと向かう。大きく深呼吸してからエレベーターに乗り込む。

「緊張してるの?」

「そりゃしますよ、部署内の皆の反応が怖い」

 業務中の公開プロポーズから、連休を挟んでの初出勤だもの。緊張しない方がおかしい。

 下を向いている私に、突然、チュッと唇同士が重ねられた。

「え、ちょ、」

「降りるよー」

 地下駐車場からは二階でエレベーターを乗り換えしなければならず、着いたら先に降りた大和さん。ニヤリ、と笑ってそそくさと自分だけ降りて行く。

 確かに二階までしか行かないエレベーターには乗る人が限られていて、現在も二人きりだったけれども。キ、キスをさり気なくしてくるとは! 本宮大和、恐るべし!

 大和さんは冷やかしを避ける為に私に気を使ってか、別々に出社しようと思ったらしく、先に職場へと行ってしまったので置いてきぼりをくらった。

「おはよ、樋川ちゃん! 今日はいつもより早いね」

「お、おはようございます」

 歩いていると後ろからポンッと肩を叩いて、挨拶をして来たのは梅田さんだった。

「今日は珍しく、クライアントとの約束がないから電車で来たんだ」

「なるほど。だから、駅から歩いていたんですね」

「え? 樋川ちゃんにすれ違わなかったけど? もしかして後ろに居たとか? でも、先に出勤っておかしいなぁ?」

 ヤバい……! 良からぬことを言ってしまい、口を右手で覆い隠した。

「あ、そっかー! 歩いている時、部長の車が通ったのが見えたのね。もしかして、一緒に車で通勤して来たのかなぁ?」

 梅田さんは勘が鋭く、すぐさま正解を導き出した。

「実はそうなんです。一緒に出勤しました」

「そっか、そっかぁ。部長にも春が来たかと思うと嬉しいよ。社内の誰にもなびかなかったのに樋川ちゃんが仕留めるとはね!」

 梅田さんは優しく微笑んでから、続けて話をし始めた。
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