失恋したら、別の幸せが待っていました!~憧れの部長と溺愛婚
 スタッフがオーダーを取りに来る前に私はそそくさと退席した。お店の外に出るなり、涙がボロボロとこぼれ落ちる。

 翔とは最近では残業だから会えないという日々が続いていた。鵜呑みにしていたが残業なんかではなくて、ただ単に浮気だった。もしかしたら、いつの間にかに私の方が浮気相手になっていたのかもしれない。

 仕事もろくにこなせない、恋愛も上手くいかない……こんな私に生きがいなんてあるのだろうか。そう考えると失恋したことよりも虚しくなってしまう。

「あれ? 樋川さん?」

「え? ぶ、部長?」

 待ち合わせしたレストランを出て、駅前までの道のりを歩いている間に偶然ながらも部長に出会った。人混みの中でも涙を流しながら歩いている私に声をかけてくれたのだが、ぐじゃぐじゃの顔が恥ずかしい。

「どうしたんですか? 泣いてます?」

「え、あ、ち、……違います!」

 部長は一人みたいで私の泣き顔を見て立ち止まる。私は必死に否定するが、バレバレみたいだ。

「この近くに知り合いのイタリアンの店があるんです。今から行くところだったので、一緒に行きましょう」

「え、だ、大丈夫です!」

「泣き顔のまま、帰すわけには行きませんよ」
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