親に搾取されてきたJKが、偏屈先生と出会って溺愛されるまで
「お前まだ高校も卒業してないなら先に言わんか! 大学生かと思ったぞ!」

 言葉もありませんというお叱りを受けつつも、私は『お試し期間』として、卒業するまで先生の家でバイトをする事になりました。
 夕方、親のご飯を作った後に先生の家にお邪魔して晩御飯とお夜食の準備をしておく。そして風呂掃除をして洗濯をする。
 それだけの簡単な業務で、今まで掛け持ちしていたバイトの合計金額よりも良い給料を貰えるとの事でした。

「良いんですか、こんな」
「俺が見出した君の価値に文句を付ける気か? どうしても気になるなら、これは俺からの口止め料みたいなものだと思ってくれたら良い」
「口止め料?」
「作家先生……小説家なのさ。だから胡桃くんが一言でも俺の事を漏らそうものなら、前歯を全てトウモロコシに変えるからな」
「それは嫌だ」

 嫌なので、親には黙ってバイトをやめ、夢望先生の元に通う事になりました。

「じゃあ、胡桃さんバイト辞めるのかぁ。寂しくなるな」

 そう言いながら、店長はあるアドバイスをしてくれました。

「給料は手渡しで貰いな。それで、今まで通りの額を銀行に入れて、後の差額は貯めておくんだ。鍵付きの小物入れなんかにね」

 そしたらいつか役に立つ日が来るよと教えてくれたので、私はそのアドバイスを給料日まで忘れぬようにとメモ帳と胸に刻んで、店長とさよならをしました。
 さよなら、良い人。次は客として行きますね。

「おかえり」

 ごきげんよう、夢望先生。
 これからよろしくお願いいたします。
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