親に搾取されてきたJKが、偏屈先生と出会って溺愛されるまで
「じゃあ、就職先は決まった……みたいなものなのね?」

 放課後、流石に先行きが不透明過ぎるという事で呼び出されました。進学も就職もしないままフラフラとしている私が不安に映ったのでしょう。先生が私を呼び止めた時は凄い顔をしていました。まるでリード繋げないまま散歩されてる犬をみてるかのよう。
 このまま全てを黙り続けている事は出来ません。仕方が無いので要所をかいつまみながら話した所、先生はホッとしたようにため息をつきました。

「良かった。加賀さん、少し抜けてる所があるから」
「はい。ご迷惑をおかけして申し訳ありません」
「ううん、そんな。加賀さんがやりたいようにするのが一番だからね」
「ありがとうございます」

 先生は穏やかに笑いますが、夢望先生と違って惹かれるものはありません。きっとこの人は仕事の範疇でくれる『優しさ』を私に明け渡しているだけで、いやそれも優しさというか、人の良さなんだけど。うーん。
 夢望先生のあけっぴろげな笑顔とは、違うように感じました。
 同じ笑顔なのに、どこが違うんでしょうか。

「じゃあ、早いけど面談終わろっか」
「はい」
「それじゃあ、お疲れ様でした」
「失礼します」

 一つお辞儀して私は席を立ちます。私と先生しかいない教室は、机と椅子があったとしてもそら寒く感じるものでした。
 普段人がどんなにいても関係なく机の方ばかり見ている癖に、こういうノスタルジアだけは感じるんだな。それが不思議でした。
 寂しくなる程、学校を楽しんでいない筈なのに。
 それとも寂しいって思っているのは、夢望先生の家なのでしょうか。一軒家の、一人で住むには少し広い平屋は私にとって居心地が良いものだったから。

「あ……」
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