親に搾取されてきたJKが、偏屈先生と出会って溺愛されるまで
 教室の引き戸を開けると、クラスメイトの小山内(おさない)さんが待ち構えていたように腕を組んでいました。
 常に可愛さへの探求に余念が無い彼女は、今頃進学の為に皆に囲まれて楽しくお勉強会をしている筈です。
 私と違って人生を歩むのが得意な彼女が、何故こんな所でスマホを弄っているかは分かりませんが……きっと、あまり知るべきではない事です。
 小山内さんは、私の事が嫌いですから。

「最近さあ、楽しそうだね」

 通りすがる時、彼女が呟いた何気ない言葉に心臓を大きく跳ねさせました。世間話に似た何の変哲もない話題に、私への興味は一切入っていません。
 ただ、ムカつく。
 幸せそうな顔が許せない。
 そんな声音に、私は背中を震わせました。

「親ガチャ失敗の、ゴミ陰キャが……今にでも捻り潰せそうな雑魚が、楽しそうじゃんね」

 ごめんなさい、と許しを乞うような声が届いたのかは分かりません。いや、何もかもが分からない。どうして彼女は、もうとっくの昔に孤立している私に執着するのでしょう。
 怖くて怖くて、ただ。
 私は鞄を背負い直すと、一直線に逃げ出しました。
 行く先は、夢望先生の元。
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