親に搾取されてきたJKが、偏屈先生と出会って溺愛されるまで
 大丈夫。
 そう思っていた筈なのに。
 顔を見ると固まっていた強がりが、途端に溶け出すように感じるのは何故でしょうか。

「書き終えたんですか?」
「うん……眠いしお腹空いた」
「お夜食」
「けど、君の顔を見たら全部吹っ飛んだよ」

 しゃがんだままも悪いかと思い、立ち上がって顔を合わせようとすると、夢望先生は私を抱きしめました。久しぶりの夢望先生は大きくて、暖かくて、安心して。いつも通りの、私の居場所でした。
 でも、今日、だけは。
 暖かいを超えて、熱くて。
 なのに足りなくて。
 もっと奥を、知って欲しいような。

「ああ……いや、君はまだ学生だったな」
「はい」
「学生、いや、それだけじゃないな。俺達を阻む物は多くあって、それは全て俺の責任だ」

 ふに。
 少しだけ丘になった下腹部を、夢望先生の長い指が少しだけ押します。たったそれだけなのにむず痒い感覚が全身に駆け巡り、私は思わず内股を擦り合わせました。
 つ、と指が下に滑ります。致命的な程の、言い逃れが出来ないぐらいゆっくりと、意味を含ませて。

「だから、今は予約だけさせてくれないか?」

 指が止まり、爪を立てながらくるくると円を描いて私の女の部分を刺激し、もう片方の手は私の腰を優しく撫でました。私の首筋に顔を埋める頭の重さも私の脳みそをとろけさせて、夢望先生の匂いは少しだけ汗っぽくて、それがなんだかクラクラして。
 甘くて、甘過ぎて、媚薬のような。

「これは徹夜明けのハイでは無い。ずっと考えていた、君と……君だけを……」
「でも、私、馬鹿だし……」

 最後の牙城になった部分を、私は口に出します。
 夢望先生と関わるようになってから、ゆっくりと溶けてきた呪い。
 小山内さんに嫌味を言われたあの日、夢望先生に「俺が見込んだ」と笑ってもらった時から、解けてきた怨嗟の積み重ね。
 あのね、夢望先生。
 本名も知らない貴方に、私は──

「釣り合わないですよ、馬鹿で親に愛されていない私なんかじゃ」

 ──恋を、したんです。
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