親に搾取されてきたJKが、偏屈先生と出会って溺愛されるまで
「親……?」
「進学、したかったんです。就職ではなく……親の望んだ進学を。そうしたら親に愛してもらえたのに。でも、それも出来ませんでした。馬鹿だから!」

 夢望先生は肩に乗せていた顔を起こし、両肩に手を置いて真剣な顔で言いました。普段けらけらと笑って私をからかう姿からは想像も出来ない姿に、私を想うが故の優しい怒りに、私は胸を高鳴らせます。
 この人は、出会った時から。
 私だけを、真摯に見据えようとする。

「俺の愛より親を見るのか?」
「それはっ!」
「家族愛が欲しいのであれば、考え直せ。お前を蝕むものを家族と言えるのか? お前が安らぐ家だった事が……あるのか?」

 だから、好き。

「でも、血の繋がった……」
「産むだけなら妙齢の女性なら大抵は出来る。けれど、育てないのなら親とは言えないだろう。そんな奴らに縛り付けられるな」
「私は、弱いから……!」

 だから、見て欲しい。知って欲しい。
 私のワガママを。
 本音を。

「自分の心に嘘をつくな。自分にまで壁を作るな……本音で言ってくれ。やりたい勉強があったのか?」
「あ……」

 私は、本当は。

「文学でも理数でもいい。君は何かに対して深く『知りたい』と思った事はあるのか? いや……勉強は、好きか?」

 私は、勉強なんかじゃなくて──
 ずっと誰かに、見て欲しかっただけ。
 愛して欲しかった、だけなんだ。

「……もっと早くに気付くべきだったな。素朴で着飾らない高校生の君が、何の為に稼いでいるかを。そうか、搾取子……クソ忌々しい……」

 夢望先生は怖い顔で呟いた後、柔らかく頬にキスを一つ落として言った。

「良い子だ、下僕……いや、胡桃。お陰で決心がついたよ。ご褒美をやろう」

 笑った顔は、いつも通り私を安心させるものへと変わっていたけれど、

「優馬(ゆうま)」
「え?」
「俺の本名だ。相坂(あいさか)優馬(ゆうま)……はッ、今の内に言い慣れておくと良い」

 普段と違い攻撃的で、そして。

「親の電話番号を教えろ胡桃! ご挨拶だ」

 私への愛に溢れた、何よりも甘い、ものだった。
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