親に搾取されてきたJKが、偏屈先生と出会って溺愛されるまで
 いつも足や服の裾を見ていたから知らなかったけど、真正面から見る二人は随分老いていた。髪が細くなって、体も弱々しくて、ずっと頭の中に鎮座していた二人の見た目よりも小さかった。
 優馬さんなら、片手で潰せちゃうのかな。
 なんて、こんな事考えてるってバレたら「生意気だぞ」って頬を膨らましちゃいそうだ。
 ファミレスに来てくれた二人とは、本当に久しぶりではあった。優馬さんといるのが楽しくて家に帰るのが遅かったせいで、時間が合わず姿を見ていなかったのだ。
 バイトを掛け持ちしていた頃は、お互いの休日が被ると狭い家でいつ親の癇癪が爆発するか分からないまま勉強するフリしてやり過ごしていたけど、優馬さんの所に行くようになってからは休日も作らなかったから。
 全部、愛しい彼に費やしていた。

「就職先は決まったの?」

 お母さんは穏やかに笑いながら席に着く。
 凄く昔、まだ小学生の頃。一度だけ見た事のある顔に私はふと心を暖かくした。

「まず親に決まった就職先を言わないなんて、本当に……本当に有り得ないのだけど、都合が良いわ」

 すると、流れるように最近の話を始めた。
 会社をリストラされた事、上司が無能でイライラしてた事、低学歴への愚痴、税金が高い事への政治批判、役所対応の悪さと愚痴、近所の人とのトラブル、愚痴、愚痴、愚痴……とにかく、私と顔を合わせていなかった半年、凄く大変だったという話だ。
 どんな仕事なのか、とか、全く聞かれない。

「……それで、貴女は月にいくら家に入れられるの? 増えるのよね、勿論」

 それどころか、私そのものすら。
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