親に搾取されてきたJKが、偏屈先生と出会って溺愛されるまで
「就職先、変えて? 仕事辞めて、私達が言う仕事をして。……まともになろうね。お母さん達、沢山サポートするから。ね? 出来るよね、お母さんとお父さんの大事な子どもだもんね」
「私……」

 手が震えても。

「家族でしょ?」

 骨身に染み付いた恐怖だとしても。

「低学歴でもなんとかなるわ。なんとかしてみせる。じゃないと家族バラバラよ」

 馬鹿って、言ってやりたい。

「──すみません、失礼します」

 優馬さんが助けてくれる、前に。

「胡桃さんの上司である、夢望です。遅れて申し訳ありません。第三者として着席させて頂く無礼をお許しください」

 深くお辞儀をするスーツ姿の男を見て、私は抑えていた涙がぽろぽろと溢れ出た。頬を滑る暖かいものは、机の上に落ちて丸く水溜まりを作る。
 親は大人しそうな、自分より弱い印象を受けたのだろう。ここぞとばかりにお父さんは声を荒らげた。

「他人の家に口出しをする気か」
「録音の許可を頂きたく存じます。よろしくお願いします」
「人の質問を無視するなんて、お里が知れる。大学はどこだ? ……いや、そもそも大学を出ているか? 権利って言って分かるか? 権利を漢字で書けるか? ん?」
「重ねてにはなりますが、非礼の程を詫びさせてください。誠に申し訳ありません」
「理由を言いなよ、家族の話に知らない人間が口を挟む理由を! 馬鹿だから出来ないか? なあ!」

 馬鹿、低学歴、頭が悪い、低脳、馬鹿、口を出すな、悪魔──そんな言葉を意に介さないまま、優馬さんは口を開く。

「胡桃さんにも、そのような教育を?」
「当たり前だろう。家族だから少し厳しくなるのは当然だ。ちゃんと躾ないと周りの人に失礼だからな。お前の親の顔が見たいな。きっと低学歴らしい惚けた顔をしているんだろうな」

 父が飽きもせずに言葉を紡ごうとしたところで。

「……あッはァ!」
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