親に搾取されてきたJKが、偏屈先生と出会って溺愛されるまで
 人格ごと変わったように、優馬さんはオドオドした態度から一転、足を組んで大きく笑った。

「耐え難いマヌケだな、まさか自分から虐待を吐くとは! 学歴に拘る奴ほどつまらんものは無いという証拠だな!!」

 両親所か、周囲にいる人達すら驚く。
 皆が、優馬さんの事をみていた。

「低学歴低学歴うるさいが、一体大学はどこを出ているんだ……おやぁ、どこの名前が出るかと思えば、金さえ積めば推薦で入れる私立じゃないか。なら国立出の俺は言う権利があるよなぁ? お前達を低学歴の馬鹿と言う権利が!」
「お前っ、なんて口の利き方を……」
「低学歴の馬鹿が口答えをするな。息をするのでさえ不愉快なのに」

 優馬さんはその一言で、いとも簡単に親との力関係を作って見せる。
 親が下、優馬さんが上。
 そんな分かりやすいヒエラルキーのお陰で、私の震えはゆっくりと止まっていった。

「そ……そんな事はどうでもいい! 俺達は家族だ!」
「そうよ、相互扶助の義務があるの。分かる? 私達はこの子に助けてもらう権利があるの!」
「普段は学歴を振り回す癖にマウントを取られたら『そんな事』? ふん、それに知らないようなら言っておくが、それはあくまで扶助する側に余裕がある場合のみ。俺の言う事を信じられんなら、裁判にでも行くか? はははっ……そんな事したら、お前達は虐待の責任を取らされるだろうがな!」
「ぐ……ッ!」

 指でつまんだ録音機を振って、証拠を強調する。法律の二文字に恐れたのか、二人は何も言わない。
 普段私を罵倒する時は、あんなにも流暢な二人が。

「安心したまえよ、裁判なんてしないさ! 使える限りの公的手段を使って俺と胡桃くんを隠し、お前達が生活保護を受け取れないように細工したいんだからな! お金が欲しいんだろ? くれてやる。ただし、サイコロを振って出た目の数しか万札は渡さんがな!」

 愛する人の、威圧によって押し黙っている。

「死すら与えん。お前達は精々六が出る事を祈って羽虫のように薄い価値のまま怯えて生きれば良い! 今月どのぐらいの金で生きれば良いか分からない生活の中で、常に胡桃くんへの謝罪を感じながら暮らせ! 少しでも下手な動きをしてみせろ、送金金額を一桁減らすからな! あーはははははっ!」

 大きく高笑いした後、優馬さんは私の肩を優しく掴んだ。

「飽きた、つまらんなこのゴミ……まあ良い。行くぞ胡桃くん。ここは不快だ」

 促されて、立ち上がる。

「あ、言い忘れはよしておけ。後悔になるぞ」

 優馬さんのその言葉に、背中を押されて……ファミレスで久しぶりに顔を見た時よりもずっと小さく見える二人に、私はぽつりと呟いた。

「ばかやろう」
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