エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい
プロローグ
『君を振るなんて元カレも馬鹿だな。こんなにも魅力的なのに』
久住部長に組み敷かれ、愛おしげに目を細めながら見つめられて心臓が早鐘を打つ。
普段のクールな表情は影を潜め、上半身裸で私を見下ろす彼の瞳は熱を帯びていた。
私が入社して三年、彼のこんな表情は今まで見たことがない。
綺麗なアーモンドアイ、筋の通った高い鼻梁に形のいい薄い唇、艶やかな黒髪は後ろに流している。
百八十センチ近くある長身に程よく筋肉のついた身体は思わず見惚れてしまうぐらい綺麗だ。
ぼんやりと久住部長を見つめていたら、ゆっくりと顔を近づけてきて唇が重なった。
これは夢なんだろうか。
あの久住部長が私にキスをするなんて現実では考えられない。
でも、柔らかな唇の感触がやけにリアルなのはどうしてだろう。
酔った頭では正常に判断できない。
唇が離れ、たった数センチという至近距離で目が合い鼓動が早くなる。
『可愛い』
聞き間違いかと思うような優しい声色と眼差しに、体温が一気に上がる。
触れるだけのキスから深いものに変わっていき、唇の隙間から入り込んだ舌が歯列をなぞり口内をくまなく蹂躙する。
私の舌を絡め取ると強く吸われ、肉厚な舌に上顎を擽られると吐息が漏れる。
こんなに気持ちのいいキスは初めてで頭の中がフワフワしてきた。
優しくも強引な口づけに思考が奪われ、彼に与えられる甘い刺激に身体の力が抜ける。
巧みなキスに溺れ、お互いの吐息や舌が絡み合うイヤラシイ水音が静かな寝室に響く。
これは本当に現実なんだろうか?
自分の身体に起きていることが理解できない。
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