エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい
「失恋というか、まあ彼氏と別れましたね。でも、別れたからって全然落ち込んでいないんです。だから、みなさんに励ます会なんてしてもらって逆に申し訳ないぐらいで」
「それは本音か?」
「えっ?」
「落ち込んでいないと言いながらも、多少なりとも影響があったと思うけど」
「それはどういうことですか?」
言われたことが理解できず、聞き返した。
「最近の羽山さんは仕事でミスしないよう、いつも以上に時間をかけてやっているように見えた。そのせいか、ここ数日は残業が増えているのが気になっていたんだ」
「……っ、それは単に仕事が終わらなかっただけで……」
思い当たる節があり、言葉に詰まった。
自分の未熟さを露呈したみたいで、恥ずかしくなる。
私みたいな下っ端の部下のことを気にかけてくれていたとは思わなかった。
久住部長は本当に周りをよく見ている人だ。
「本当に大丈夫ならいいんだ。でも、もし何か不満があったり心にため込んでいるものがあれば全部吐き出してみろ。ここは酒の席で無礼講だ。元カレの愚痴でも何でもいい。聞いてやるぞ。口に出すことでスッキリすることもあるだろ」
元カレの愚痴か……。
そういえば誰にも話していなかった。
割り切っているとはいえ、元カレについては思うところがあったのは確かだ。
久住部長がこんなことを言ってくれるなんて二度とないだろう。
アルコールの力もあり変なスイッチが入った私の口は勝手に動いていた。