エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい


「つまらない話だと思うんですけど、聞いてもらってもいいですか?」
「ああ」
「元カレとは半年ぐらい会っていなかったんです。それで、先週いきなり連絡が来たかと思えば、私の他に好きな人が出来たから別れたいと書いてあって」
「半年も会ってなかったのか?」
「そうですね。よく考えたら、付き合って数ヶ月もしないうちに徐々に会う機会が減りました。向こうが仕事が忙しいと言って全然会わなくなって。私から連絡しても断られるので、早い段階で気持ちは冷めてました。ホント最悪ですよ。身体の関係も雑な扱いをされただけ。決定的な言葉もないまま半年も放置されるとは思ってなかったですけど」

ため息混じりに言うと、久住部長の表情が険しくなっている。
あー、なんか余計なことまで言ってしまったかな。
私はあえて笑いながら言った。

「まあ、放置された時点で自然消滅したと思っていたので、改めて別れたいと言われても本当にダメージはないんです」
「そうだったのか。でも、羽山さんのことを大事にしない男となんて別れて正解だよ。欲を言えばこっちから振ってやりたかったな」
「ですよね。私もそう思います!なんなら平手打ちでもお見舞いしたかったです。まあ、二度と会いたくないですけど」
「へぇ、羽山さんて意外に頼もしいんだな」

クスリと笑った久住部長。
貴重な彼の笑顔が見られるなんて、今日は出血大サービスの日なのかな。
思いのほか、久住部長との会話が楽しくてお酒が進んだ。


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