エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい

チラリと隣でお酒を飲んでいる部長を盗み見る。
仕事も出来て部下のことも気遣える優しい人で、おまけにイケメン御曹司。

今は彼女がいないらしいけど、将来、久住部長と結婚した人は間違いなく幸せだろうな。

結婚か……。
そういえば、幹也と付き合っている時に結婚するというビジョンが見えなかった。
そう考えたら、本気で好きじゃなかったのかもしれない。
 
「私、恋愛に向いていないのかな……」

独り言のように呟いた。

私の恋愛遍歴はかなり乏しい。

初恋は叶わないから諦めた。
それ以降、好きな人なんて出来なくて二十歳過ぎても恋愛経験ゼロ。

私はいわゆる社長令嬢で、心配性の家族の助言もあり中高一貫の女子高を経て女子大に入学した。
しかも、大学卒業まで実家から通っていて、過保護な家族に守られて育った箱入り娘。
当然、男性との関わりはほとんどなかった。

そんな私も大学在学中に、自立したいという気持ちが芽生えてきた。
周りの友達は優秀でアグレッシブな人が多く、海外留学したり、会社を立ち上げたりしている姿を見て感化された。
箱入りの私に何ができるか……まずは一人暮らしから始めようという考えに至った。

そのことを家族に伝えたら当然のように反対されたけど、母親だけは味方になってくれた。
母親も一人暮らしの経験があったからだ。

『何事も経験は大事。このままだと琴葉の成長に繋がらない』と言って父親たちの説得に一役かってくれた。
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