エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい

いろいろと思い出すと急に惨めな気持ちになり、手に持っていたビールを一気に飲み干した。

「羽山さん、あまり飲み過ぎない方がいいよ」
「大丈夫ですよ~」

私はヘラリと笑いながら店員にビールの注文をし、それを見ていた久住部長がため息をついた気がした。

「琴葉、あんた顔真っ赤じゃん。飲み過ぎなんじゃないの?」

推し活もひと段落したのか、望がこちらのテーブルに戻ってきた。

「そんなことないよ~」
「すでに目がトロンとしてるんだけど。そろそろお酒はやめときな。語尾が伸びてるし呂律も怪しくなってるよ」

心配そうに言いながら私の前に座った。
望は長女気質なので、面倒見がよくて世話焼きだ。

実家を離れて自立したとはいえ、私は三人兄妹の末っ子なのでつい甘えてしまう。
しかも、今日はいつもよりたくさんお酒を飲んでいることもあり、楽しくて仕方がない。

「ふふ、望はおかーさんみたいだね」
「こんな手のかかる子供は嫌だよ。そんなことより、お酒禁止」

望は私のビールのグラスを取り上げて、離れた場所に避難させる。

「確かに酒は止めた方がいい。飲むならウーロン茶だ」

そう言ってウーロン茶の入ったグラスを私の目の前に置いたのは久住部長だ。

「羽山さん、さっきからぼやいては飲んでの繰り返しだったからアルコールはお預けだ」
「さすが久住部長!助かります」

望がグッジョブと言わんばかりの笑顔を見せた。


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