エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい

「羽山さんは俺が責任もって家まで送るから、吉瀬さんは安心して二次会に行けばいいよ」
「いいんですか?でも、ご迷惑じゃ……」
「俺は最初から二次会に参加予定はなかったから帰ろうと思っていたんだ。だから、吉瀬さんは気にしなくていい。二次会に行きたかったんだろ?」
「ありがとうございます。お言葉に甘えてもいいですか?」
「ああ」

望は「ありがとうございます」とお礼を言い、久住部長に私を引き渡した。

「琴葉、家に帰るまでが励ます会なんだから途中で寝ちゃだめだよ。じゃあね」
「うん、またね……」
 
望は私に手を振り背を向けた。

「羽山さん、行くよ」

久住部長の逞しい腕が私の身体を抱きかかえるように支えてくれる。
望とは違い、安心感を覚える腕に身を任せて歩き出す。
ふと、久住部長が足を止めた。
 
「タクシーに乗るよ。羽山さん、聞こえてる?」

私が頷くとタクシーに乗るように促され、続いて久住部長も乗り込んだ。
先に私の行き先を伝える様に言われ、ざっくりとした住所を告げた。
マンション近くのコンビニでおろしてもらおうと思ったからだ。
 
タクシーが動き出し、寝たらいけないと思えば思うほど眠気は最高潮。
どうにか抗ってみたものの、頭が何度もガクッと揺れる。
不意に抱き寄せられ、久住部長にもたれかかるような形になった。

「羽山さん、眠いなら寝ていいよ」

優しく声をかけられた気がして私は素直に目を閉じた。

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