エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい

深いまどろみからゆっくりと意識が浮上し、数回瞬きして脳を覚醒させる。
いつものようにスマホで時間を確認するため、枕もとを探ったけど目当てのものが見つからない。

えっ?
違和感がいくつもあり、パチッと目を開けた。
まず、スマホを探すために触った自分のベッドとは違う肌触りのいいシーツ。
そして見慣れない部屋な上、誰かの腕が私の身体に巻き付いている。

どこ?そして誰?
掛けていたシーツがずれ落ち、自分が裸ということに気づいて大混乱。
見た感じ、このむき出しの腕の持ち主も上半身は何も身に着けていない。
まさか、と嫌な予感がしていた私の耳に背後にいる人物から寝息が聞こえて冷や汗が出る。
恐る恐る首を動かすと、久住部長の無防備な寝顔が視界に飛び込んできた。

「ヒッ、」

驚きすぎて変な声が出てしまい、慌てて口を押える。
ベッドに裸の私と上半身裸の久住部長……どうしてこんな状況になったんだろう。
昨日の記憶を必死に手繰り寄せていく。

望に私を励ます会なるものを開いてもらって居酒屋でお酒を飲んだあと、久住部長と一緒にタクシーに乗ったところまでは覚えている。
それから記憶があやふやだ。
今現在、ハッキリしていることは調子に乗っていつも以上にお酒を飲んでしまったことだけだ。

とりあえず、この逞しい腕の中から抜け出そう。
ガッチリと拘束されていたわけではないので、そっと腕を持ち上げてどうにか抜け出すことに成功した。

< 20 / 38 >

この作品をシェア

pagetop