エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい


改めて眠っている久住部長を見ると、伏せられたまつげは長く端正な顔立ちをしている。
いつもは後ろに流している髪の毛も、今は額にかかり少し幼く見えた……ってそんなことは今どうでもいい。
現状から考えられるのは、私は久住部長と一夜を共にしてしまったんだろう。
その証拠にベッドの隅に避妊具の箱が無造作に置いてあるし、何より私の下半身に鈍い痛みが残っている。
なんとなく、ごみ箱を覗き込むと使用済みの避妊具数個とティッシュが入っていた。
それを見た瞬間、昨日の久住部長の姿や私の痴態が断片的に頭に浮かんできて青ざめる。

完全には思い出せないけど、夢だと思ってあんな乱れた姿を久住部長の前で晒してしまうなんて本当にあり得ない。
私はとんでもないことをしてしまったのかもしれない。
しかも、数個の使用済み避妊具って何?
元カレの時は一回で終わっていたのに……。
全身から血の気が引き、二日酔いの頭痛も相まって最悪の状態だ。

私に与えられた選択肢は、このまま留まるか逃げるかの二択。
もちろん、私は逃げるを選んだ。

そうと決まれば服を着よう。
周囲を見回すと、服は床の上に脱ぎ散らかされていた。
これは普段の私は絶対にしないことだ。
何とも言えない気持ちでベッドの隅に転がっていた下着を身に着け、カットソーを拾い頭からかぶった。
急いで身支度を整えていたら、背後から聞こえてきた声に心臓が跳ねた。

「……起きたのか」
「お、おはようございます」

ぎこちなく挨拶する。

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