エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい
週が明けた月曜日。
仮病でも使って休みたかったけど、さすがに社会人としてよくないよなと思い留まった。
電車に乗り、何度目か分からないため息をこぼす。
同じ部署の上司でもある久住部長に対して合わせる顔がない。
あんなことをしでかしておいて気まず過ぎる。

あの日の朝、冷静さを失っていた私は久住部長の家から逃げ出した。
家に着き、とりあえずお風呂だと思って服を脱いで鏡に映った自分の身体を見て驚愕した。
胸元やあちこちに赤い痕が付いていて、思わず『なにこれ!』と叫んでしまった。
これはいわゆるキスマークというやつではないか!
初めて付けられたソレを無意識で指でなぞっているのに気づき、赤面した。
そして、落ち着きを取り戻した私は湯船の中で昨夜の出来事を思い出していた。

***

居酒屋を出てから久住部長と一緒にタクシーに乗った。
タクシーの中で強烈な睡魔に襲われて眠ってしまい、気が付けば見知らぬ家のベッドの上。
喉が渇いたな……と思い、ゆっくりと起き上がり目に飛び込んできたのは見覚えのない部屋。
状況がのみ込めず、ぼんやりしていたら家の主に声をかけられた。
 
『起きたのか?喉が渇いているだろ』
『えっ?』
『どうした?ほら水』
『あ、ありがとうございます』
 
水の入ったグラスを差し出され、私はそれ受け取った。
頭が上手く働かないながらも、部屋の主をよくよく見ると久住部長だと理解する。
タクシーの中で寝ていたはずの私をここまでどうやって連れてきてくれたんだろう。
絶対に重くて大変だったはずだ。
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