エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい
昼から商品の受注データ入力をしていた。
顧客から届いた発注書の内容確認してから数字を入力し、それが終わると伝票を作成していく。

「羽山さん、悪いんだけどヒラカタの販売データ出せる?」

声をかけてきたのは私の営業担当の一人、二年先輩の伊藤博也さん。
伊藤さんは学生時代は野球をしていて、甲子園に出たという話を聞いたことがあり、有名な選手だったらしい。
がっしりとした体格で短髪の黒髪は清潔感にあふれている。
 
「先月までの分ならすぐに出せますよ。先週までの数字が必要なら、問い合わせして入力作業しないといけないので少しお時間をいただくんですけど」
「いや、先月まででいいよ」
「分かりました。データはプリントアウトした方がいいですか?それともメールで添付しましょうか?」
「あー、じゃあメールで送ってくれる?」
「分かりました」

今、開いていた画面を保存してからUSBを取り出す。
そして、販売データが入っている別のUSBをパソコンに差し込んだ。
販売データを開いていたら、なぜかまだ私のそばに留まっていた伊藤さんが口を開いた。

「金曜は励ます会に参加できなくてごめんな。出張と被ってたから。また今度、飯でもご馳走するよ」

え、励ます会?
あー、望は伊藤さんも誘っていたんだ。
だけど、謝ってもらう必要なんてこれっぽっちもないし、ご飯までご馳走になるなんてとんでもない。
むしろ私ごときのために皆さんすみませんと、こちらが謝罪したかったぐらいなのに。
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