エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい
第二章
次の週の金曜日、私は高級ホテル『ベリルスター』の一番大きなパーティー会場(宴会場)にいた。

そこでHYM商事の創立記念パーティーが行われていた。
創立五十周年ということもあり、取引先の企業、自社の社員やマスコミ関係者などが多数詰めかけていた。

高い天井には煌びやかなシャンデリア、踏み心地のいい絨毯、会場内や入り口には綺麗な花が飾られている。
大型スクリーンにはHYMのこれまでの変遷の動画が映し出されていた。

どうして私がパーティー会場にいるかというと、私の父親がHYM商事の社長だからだ。

父親は幼なじみで同じ職場だった母親と結婚して、三人の子宝に恵まれた。
長男の芹は三十二歳、次男の柊斗は二十八歳、そして私だ。

芹くんは父親の会社を継ぐ予定で修行中、柊くんは大学時代の友人と起業し、若くしてその会社の社長だ。
妹の私から見ても二人はかっこよくて文武両道、とある部分を除けば文句のつけようのない人物だ。

平凡なのは私だけ……というのは置いておいて。

パーティーは立食スタイルで、テーブルには豪華な料理の数々が並んでいる。
私はそっちの方が気になって仕方がない。
でも、今は壇上で社長である父親が挨拶しているのでおとなしくしている。

普段、自分が社長令嬢だなと思うことは滅多にない。
だけど、こういう場に来て祖父や父親、兄がスーツを着て、たくさんの人に囲まれながら壇上で挨拶している姿を見て『そういえば』と思うぐらいだ。


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