エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい

今日の私は、薄紫のミモレ丈のシフォンドレスを着て、祖母からもらったパールのネックレスを身に着けている。
HYMの会社のロゴに紫が使われていることもあり、母親と相談して薄紫のドレスを選んだ。

「琴葉、疲れてないか?」
「疲れてないよ」

声をかけてきたのは私の過保護な家族の一人、次男の柊斗だ。
軽くウェーブのかかったアッシュブラウンの髪に端正な顔立ちは、我が兄ながらかっこいいなと思う。

「柊くんこそ疲れているんじゃないの?大阪から帰ってきたばかりって聞いているけど」
「可愛い琴葉に会うためならなんてことはないよ。でも、そろそろ戻らないといけないから帰る前に琴葉と話しておこうと思ったんだ」

笑いながら言う柊くんはかなりのシスコンだ。
私に会うためって……今日は親の会社の創立記念パーティーなんだけど。
柊くんは兄の芹くんと二人で『琴葉は絶対に共学になんか行かせない』と言って、中高一貫の女子高を強く勧めてきた。
そんな柊くんはじっと私の顔を見つめて口を開く。
 
「琴葉、なんか雰囲気が変わった気がする。まさか、男でもできたんじゃないだろうな」
「えっ」

そんな鋭い突っ込みが入るなんて思っていなかったので動揺する。

男はいたけどすでに別れて、上司とワンナイトラブしましたなんて言えるわけがない。
もし話したら、発狂するに違いない。
多分、柊くんも芹くんも私が男の人と付き合ったことがないと思っているはずだ。
家族には付き合っていたことを話していなかったし。
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