エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい

「えっ、ってなんだよ。琴葉、正直に話せ」
「正直も何も……」
「琴葉に柊斗。二人で何を話しているんだ?」

柊くんと話しているところに背後から声をかけてきたのは、長男の芹くんだ。

「あっ、芹く……っ」

助け船が来たとばかりに振り返った瞬間、声にならない声が出た。
芹くんの隣に立っている人を視界に捉えたからだ。

「兄貴、琴葉の雰囲気が変わったと思わないか?」
「そうか?琴葉はいつも通り可愛いよ。今日のドレスもよく似合っているし。うちの会社の色を選んで着てくれたんだろ。母さんが言ってた」

光沢のあるブラックスーツを着ている芹くんも相変わらずのイケメンで、涼し気な切れ長の目は父親にそっくりだ。
そんな芹くんは目を細めて私を見る。

恥ずかしげもなく褒めてくれるので、こちらとしては照れくさい。
それよりも、芹くんの隣にいる人の顔がまともに見れない。

「琴葉、そろそろ帰るんだろ。俺らは最後まで居ないといけないから柊斗が琴葉を送ってくれないか」
「あー、悪い。俺は大阪に戻らないといけないから無理なんだ」
「そうか……。あ、恭二はこのあと暇だよな?」
「俺?まあ、特に予定はないけど」
「じゃあ、琴葉を家まで送ってくれないか?」

ちょ、ちょっと待って!
誰に何を頼んでいるの?

私はギョッとして芹くんを見た。
表情には出していないけど、心中穏やかではない。
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