エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい
父親は私の着ているドレスを見て目を細め、一緒に写真が撮りたいと言い出した。
父親、母、芹くんとそれぞれのツーショット、両親とのスリーショット、柊くん抜きの家族ショットを撮る羽目になった。
写真を撮ると言っても、スマホのカメラでだ。
スタッフの人に撮ってもらい、それをトークアプリの家族のグループに送ると言っていた。
きっと、これを見た柊くんが文句を言う未来が見えた。
「お待たせしました」
「そんなに待ってないよ。あのさ、俺も写真を撮ってもいい?」
「えっ?」
そう言うと、久住部長は自分のスマホをポケットから取り出してそれをスタッフの人に渡す。
「すみません、写真を撮ってもらってもいいですか?」
「はい、いいですよ」
女性スタッフの人は笑顔でスマホをこちらに向けてくる。
写真?
突然のことに訳が分からないまま、久住部長は私の隣に並ぶ。
「もう少しくっついてください」
もう十分くっついていますけど?
近すぎてドキドキしている私をよそに、久住部長は私の肩を抱いた。
「いいですね。彼女さん、もう少し笑ってください。はい、いきまーす」
カシャという音がし「いい写真が撮れましたよ」と女性スタッフがスマホを久住部長に差し出してきた。
「ありがとうございました。羽山さん、行こうか」
久住部長は女性スタッフにお礼を言い、私をエスコートするようにパーティー会場を出た。