エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい

よくよく考えたら、どうして久住部長は私と写真を撮ったんだろう。
それが気になって聞いてみた。

「あの、写真はどうして……」
「綺麗に着飾っている羽山さんと俺も写真を撮りたかったんだ。芹に自慢される前にね……」
「えっ?」

撮りたかったのあとは、ボソボソと喋っていたのでよく聞き取れなかった。
聞き返そうとしたら「そうだ」と話を続けてきた。

「これ、送りたいから連絡先を聞いてもいい?」
「あ、はい」

流れるように話題を変え、私はそれにつられるようにスマホを出して連絡先を交換した。

「三年目でやっと連絡先を交換できた。仕事中はプライベートな連絡先なんて聞けなかったからね」

そう言って久住部長は微笑んだ。
営業の人の連絡先は知っているけど、それは会社のスマホだからプライベートなものではない。
追加された久住部長の連絡先を見て不思議な気持ちになった。

更衣室で着替えるために久住部長と一旦別れた。 
着替えをする必要のない久住部長は一階のロビーで待っているとの事で、私は急いで着替え始めた。
薄紫のパーティードレスを脱いで普段着に着替えると、軽くメイクを直す。
ネックレスを箱にしまい、バッグの中に入れる。
鏡の前で全身を確認し、更衣室を出た。

ホテルのロビーに向かうと、ソファに座っている久住部長に女性が声をかけている場面に遭遇した。
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