エリート御曹司は失恋した部下を溺愛したい

三条さんに関わるとろくなことがない。
ぬいぐるみ事件から疎遠になっていたから平穏に過ごしていたのに、こんな形で彼女に遭遇するとは思っていなかった。

父親の会社も数年前までは三条と付き合いがあったみたいだけど、今は距離を置いている。

三条の娘が私を突き飛ばしたこともそうだけど、父親の方もいろいろと悪い噂を耳にしたらしく、HYM商事としても三条との関わりを一切絶っていた。

だから、三条を招待していないはずなのに、どうして娘がいるんだろう。
何か別件でこのホテルに来ていたんだろうか。
それとも、さっきの久住部長の言っていたことが本当なら、三条さんがここに来た理由はパーティーにはうちの取引き先の御曹司も来る可能性もあるかと思って待ち伏せしていたとか?
それだったら怖すぎるけど、まさかね……。

久住部長はため息をつきながら口を開いた。

「この前は立花結翔、次は羽山芹に声をかけて、今度は俺?悪いけど、君の評判は最悪だよ。しかも、相手に恋人がいるにも関わらず声をかけるのは節操がなさすぎる。そろそろ落ち着いた方がいいんじゃないのか?」
「じゃあ、恭二さんで最後にします。だから、私と付き合って下さい」
「それは無理だ」
「どうしてですか?恭二さんには恋人はいないと聞いています」

自分の兄の名前が出たことにも驚いたけど、私はいつまでこのやり取りを見ていないといけないんだろう。
先に帰ってもいいかな、なんて思っていたら久住部長が私を見てフッと微笑んだ。
え?

< 41 / 122 >

この作品をシェア

pagetop